長渕剛になりたいと思った

子供のころから家業のお手伝いで肉体労働を強制されたので、気持ち悪いほどの筋肉量でした。とにかくバカ力。中学の頃は、腕相撲では同級生に敵なし。一つ上の柔道部の先輩に、一人だけ力ではどうしても敵わない人がいましたが、柔道では負けることはなかったので、良しとしましょう(何が?)。それにしてもその先輩、あんなにすごい筋力なのに、柔道ではなぜそこまで弱いのか、不思議でなりませんでした。

読者の皆さんは、ムキムキマンをご存じでしょうか?
40年以上前に、一世を風靡した(笑)タレントさんです。


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(登場曲「エンゼル体操」を歌っていたのは、女優のかたせ梨乃さんだと知って、ビックリ。)

中学生の時に、担任だった体育の教師が、あれはスゴイと絶賛していました。
あんな風に胸の筋肉を動かせるのは、並大抵の努力ではない、俺の筋トレの量は半端ではなかったが、それでもできないと。
でも、私、中学生の頃にはすでに、動かすことができたのですよ。ま、あそこまできれいな筋肉ではなかったけど。
いつだったか、居酒屋で相席になった私よりも少し年上くらいの男の人が、
「俺さ、すごいんだよ。筋トレを頑張っていたら、胸の筋肉を動かせるようになったんだよ」って自慢げに話していました。
私の方にも自慢げに振ってくるから、つい
「僕は中学生の時にはすでにできていましたよ」
って言ったら、黙ってしまいました。
彼にとっては、ずっとアレに憧れていて、自分を誇れる大きな大きな自信の素だったようなのですが、申し訳ない、私の一言でせっかくの自信と言うか自慢ネタが崩壊してしまったようです。
その後は、気持ち悪いくらい、私への尊敬の眼差し。
私にとっては胸の筋肉を動かせることくらい、特別なことでも何でもないのに、私と同世代の男の子にとっては、あのムキムキマンの影響もあり、特別なことのようです。
特にプロレス好きの人には、堪らないようです。

ただ困ったことに、昔は胸の筋肉を動かしても、男子にはものすごい尊敬されても、女子にはただ気持ち悪そうに見られていました。
筋肉ブームと言われる今はどうなんだろ?

もともと骨格も大きくて、そこにたくさん筋肉がついているものだから、体重も重いのです。身長は176㎝くらいですが、どんなに痩せても80㎏くらいです。
一時、摂食障害のようになった時でさえ、病的にガリガリになって、それでも75㎏はありましたから。

そう、もともと重い体なのですが、そこに長年の不摂生が重なって、ブクブクと太り、最大で120㎏くらいになってしまって...。

あるとき、私が勤めていたスーパーの前の八百屋さんで、おかみさんが倒れて。
自宅兼店舗の2階で倒れたのですが、このおかみさんがなかなかのふくよかな方でして、昔の家ですから階段の傾斜が急でとても狭い。救急車が来ても、担架で運び出すことができなかったのです。
結局、消防車(はしご車)までやってきて、2階の窓から運び出すことになってしまって。
それはもう、大騒動でした。
そのおかみさん、残念ながら助からなかったのですが、それを見た時に考えました。
私もこのままの体形だと、万が一のことがあった時に、それを助けてくれる人に迷惑をかけてしまうなと。
その時に心から痩せたいと思いましたね。それまで痩せたいと思ったことなんてほぼなかったものですから。
贅肉はもちろんですが、筋肉も生きる上で最小限だけあればよいって。
とにかく体重を落としたい。

念願がかなって、今は80㎏くらいに落ち着いています。
できれば70㎏くらいまで落としたいとは思うのですが、もともと骨格が大きいので、そこまで落とすと健康を害してしまいそうです。

筋肉もだいぶ落ちましたね。
特に首から肩回り、そして太腿からお尻の辺り。
昔は服を買う時に、肩回りで合わせると、お腹の辺りがぶかぶかになるし、お尻周りで合わせるとやはりお腹辺りがぶかぶかになるし。
昔は親戚が紳士服のお店をやっていたので、よくお直ししてもらっていましたね。
でも今は、普通の既製品で、ジャストサイズで着られるようになりました。

そんなわけで、ずっと筋肉なんて最小限あればいいや、筋トレなんてもう2度としたくない、そう思っていたのですが...。

今までにも何度か書いていますが、中学生の頃は、長渕剛が大好きでした。
ないものねだりと言いましょうか、(今とは違って)あの細い体で全力で歌っている姿に憧れていたのです。
似合いもしないのに、服装を寄せてみたり、ブルースハープ(ハーモニカ)を首からかけて、そしてヘビーゲージといって、ギターには大きな音の出る太い弦を張っていました。
私のギターは当時のヤマハの一番安いモデルだったので、ネックが反って、それこそ折れてしまいそうでした。
NHK-FMの公開ライブを録音して、何度も何度も聴いてコピーしていましたね。
残念ながら、今はすっかり忘れてしまって、指も動かない。簡単なCのコードを押さえるのにも難儀していますけど(笑)。

長渕剛の歌の中で、一番好きなのは「風は南から」
若い頃は福岡を拠点ににして活動していた長渕さん。故郷の鹿児島を離れて、福岡にやってきたころの気持ちを表した歌だと思います。
「風は南から」はファーストアルバムのタイトルですが、なぜかこの曲が収録されているのは、セカンドアルバム「逆流」です。


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もともとフォーク調だったのが、アルバム「時代は僕らに雨を降らしてる」あたりからロック色が強くなり、その後やや迷走して、その後に続けて発表したアルバム「ライセンス」「昭和」「ジープ」。アルバムとしては、この辺りが一番好きかな。
とあるサイトで、ファンが選ぶアルバムランキングみたいなのがあって、この3枚は1位、2位、4位でした。3位の「ステイドリーム」は、個人的にはそれほど好きではないのですが、3位と4位は僅差。
やっぱりそうだよねって、ほぼ納得できるランキングでした。
このお気に入りの3枚は、いつも車に乗せて、よく聴いていました。
一番合うのは、深夜に首都高の湾岸線を、千葉方面からの帰りにゆっくりと流す時。

ちなみにこの頃は、車で聴く音楽はだいたい決まっていて、例えば中央道の八王子付近から武蔵野台地を望みながら東京方面に向かっている時はRCサクセション仲井戸麗市、深夜の首都高環状線をゆったりと流す時はライ・クーダー、明け方のワインディングではコルトレーン、などなど。

話は戻りまして、その後の長渕さんは何となく、地べたを這いずり回るような歌が多くなって、だんだんと聴くのが苦しくなり、遠ざかってしまいました。方向性が今の剛さんに向かい始めたのだと思います。
だんだんと私の意識の中でも薄れてきて、もう何年も十何年もずっと聴かないでいたのですが...。

最近、テレビでたまたまTakuya Nagabuchiという長渕剛のそっくりさんを見まして。

はじめは物まね芸人とかそういう感じの捉え方をしていたのですが、ちょっと聴いてみると、それは物まねの域をはるかに超えていました。
完全コピー。長渕愛に溢れている。

オールドファンにとってみたら、昔のきれいな声で歌っていた頃の剛さんの再来です。
もうあの歌声は聴けないのだなと諦めていた、それをリアルタイムで聴けるわけです。
歌声だけではなく、話し方もそっくり。
ま、顔は似ているとは言えないけど。


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いろいろな記憶が蘇りました。

これがきっかけで、YouTube長渕剛の歌をいろいろと聴いていました。

今になって長渕剛、この人がすごいなと思うのは、自分がこうしたいと思ったら、それに向かって突っ走るところ。周りの意見などどうでもよくて、自分の信じる道を突き進む。
だって、オールドファンにとってみたら、昔のままが良いっていう人ばかりです。私もその一人だし。
でも剛さんは、そんなことどうでもよいのです。自分がこうしたいと思う方に突っ走るだけ。
俺はこう思う、お前はどうよ?っていつも自らの「生きざま」を示して、たくさんの聴衆の中でも、その一人一人と真剣勝負をしている。その結果が今のスタイルになってしまっただけで、今でも昔と変わらず、ただただ自分の真実を表現しているのです。
そんなんだから、歌詞も時にはとても生々しい表現になります。
みんなで楽しく音楽を聴きましょうというスタイルではないのです。

いつだって真剣勝負。
そんなんだから、桑田佳祐氏と犬猿の仲になってしまうのです。
アプローチの仕方が全く違う。
どちらが正しいというものでもなくて、でも特に長渕さんは桑田氏のやり方を認められない。リリースしてしまえば、それからは聴き手がどう捉えようと自由なはずなんですが、長渕さんはちょっと大人げないのかな。でもそれが長渕流。
ずいぶんと昔に、たまたま聞いた桑田佳祐氏のラジオ番組で、桑田さんがこの曲を絶賛していました。


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エレキギターの弾き語りで始まるのですが、これかっこいいねって。
この通り、桑田さんは、別に長渕さんのことを悪く思っていないし、ただ彼流の物言いで褒めるわけですが、長渕さんにはそれがバカにされていると感じてしまうみたいで。

また、長渕さんの曲の中に「お家へ帰ろう」という歌がありまして。


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どこで聞いたのかは知らんけど、私の兄(大のサザンファン)が面白い曲だなって、私にCDを貸してくれって。カラオケで歌うんだって。
長渕さんからしてみたら、ものすごいメッセージを盛り込んだ歌なんですよ。
個人的には、ミック・ジャガーに忖度している歌詞があって、そこは気に入らないのですが。
もちろん彼としては、冗談でやっているわけではなくて、聴き手との真剣勝負。
でも私の兄は、それこそコミックソングくらいのつもりでいる。
こんなのカラオケでわいわい楽しむ歌ではないのに。

他にも自分の彼女が死んだことを歌った「祈り」とか。
ライブアルバムではさらに生々しい。


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自分に初めて子供が生まれた時のことを歌った歌とか。


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歌詞がとても生々しくて、どうしたってみんなで楽しく聴きましょうという歌ではない。
私は、奥さん(志穂美悦子)はこんなのよく許したなと思うほどです。剛さん、すごい奥さんを嫁にもらったね、ほんとそう思う。

なぜ、こんなに生々しい歌詞の歌を公に向けて発表できるか。

それはたぶん、長渕さんは聴き手を、特にそれが長渕ファンならば、絶対的に信用しているからだと思います。
「俺」の真剣勝負に付き合ってくれる人たち。

そこを理解できない人は、あまり長渕さんの歌を聴いてほしくないなという気がします。
そう、私の兄のような人。

ま、私もその「真剣勝負」に疲れて、離れていってしまったわけではありますが。

ちなみにファンだった私にでさえ、これはちょっとという歌もたくさんありました。
例えば、最初にヒットした「順子」なんて、なんで?と思ってしまうし、あとはきれいな言葉を並べただけの歌「乾杯」。これも大ヒットしたけど、私は大嫌い。
ただ、東北の地震の時に、自衛隊を前に歌った時は、ちょっと目頭が熱くなりました。


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これらのことにに気づいた時、やっぱりこの人かっこいいなと思ってしまった。
もしかしたら、これから彼の発表する音楽に興味を持てないかも知れない。でも、それは好き嫌いのことなので、仕方のないこと。
だからと言って、彼を否定するわけではないのです。やっぱりかっこいいです。

ま、警察官の息子のくせに警察のお世話になってしまったというのが、ちょっとナンですが...。

そんなことを考えていたら、ふと、俺も長渕剛になりたい...。そう思ってしまった。
周りになんて言われようと、自分を貫く、その姿勢だけは忘れたくないですね。

長渕剛になるために、まずすること...

ずっと筋肉なんていらないと思っていたけれど、俺も筋トレ始めようかななんて、漠然と考えました。

長々と書きましたが、ただ単に、ちょっと筋トレ始めてみようかなという話でした。

おしまい