さださんがこの人に憧れた理由が、今になってようやく少しわかったような気がしたー加山雄三「海 その愛」

歌手のさだまさしさんって、もともとはバイオリンの方を志していたんですよね。
長崎のちょっとお金持ちの家に生まれたさださん。プロのバイオリン奏者を目指して上京。
父親の事業の失敗であきらめることになったのかと思いきや、お母様がなんとかやりくりして、そのまま東京でバイオリンの勉強を続けていたのだけれども…。
東京での生活の中で、ギターを弾いて歌うことの方が面白くなってしまった。
なんと親不孝息子...。
で、その時の憧れが加山雄三さんだったそうです。

さださんの音楽と、加山さんと、自分にはどうしてもつながらなかったんです。
全く異質のものじゃないですか。
若い頃のさださんって、茶目っ気たっぷりの歌もあったけど、私の印象ではとても神経質な歌い方をしていたと思います。


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一方の加山さんは、大らかに朗々と歌い上げる感じ。アーティストというよりも、アイドル的なイメージだったんですよね。

昨年末の紅白に加山さんが出て、そして歌った「海 その愛」がとてもステキで、もちろん若い頃の方が声がしっかり出ていたし、そっちの方が歌い手としては全然上だとは思うのですが、こんなに年をとっても、昔との落差があまりないのもスゴイなと思ってみたり。ステージで歌うのはこれが最後ということで、なんだかじんわりしてしまいました。

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何度も何度もYouTubeで聴いてしまったこの「海 その愛」
何度も聴くうちに、コメントのところを見ていたら、この歌は加山さん自身が作曲したのだと知りました。(作詞は岩谷時子さん。作曲の弾厚作というのは加山さんのペンネーム)
このほかにもたくさん作曲しているようです。

さださんはきっと、バイオリンの世界を窮屈に感じてしまったんだろうな。
そこに来て、加山さんの存在に触れて、この人のように自由に自分を表現してみたくなった、そんな感じではないのかな。
何というか、さださんの目指すものと、加山さんに何か親和性を感じたのでした。

それにしても、若い頃は何とも思わなかったけど、この「海 その愛」を聴いて、ものすごいステキな歌だなと感じました。
加山さんといえばギターのイメージですが、ピアノの弾き語りの方がかっちょ良い。

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歌詞は基本的に、海と男と愛と俺を繰り返すだけの単純なもの。複雑なものは一切なくとても優しいのです。
難しい言葉がまったく出てこない、そして余計な説明がない分、この少ない言葉でものすごくイメージが広がってくる。

そのイメージは、人それぞれ、自分の今のポジションとか、今までの経験とかで全く変わってくるのでしょう。人によっては、「男」を「女」に書き換えても良いと思うし、俺を「あたし」とか「あたい」とか、それこそ「朕」でも良いのだと思います。

聴いていたら涙がポロポロこぼれてきてしまった。

なんで何度も何度も耳を通過してこんな身近にあったのに、今まで気が付かなかったんだろう?
本当にとてもステキな歌です。
もっと若い頃の加山さんの歌声で聴いてみたい。それと同時に、誰かもっとカバーしないかなと思うのでした。