読了 「52ヘルツのクジラたち」町田そのこ著

以前にメンタルが崩壊していた頃、鬼束ちひろの歌ばかり聴いていた頃があります。
ものすごいファンというわけでもなくて、歌も決してうまいとは思わないし、声質もあまり好きな方ではない。
でも、彼女の紡ぎ出す言葉は、いつもとても引っかかるのです。

2枚組のライブアルバム、これだけを持っていて、何度も何度も聴いていました。
夜、寝る時は必ず聴いていましたね。涙が出ちゃうので、人前では絶対に聴けない(笑)(笑)。

実際には、どん底の時は、音楽なんか聴く余裕もなかったから、少し回復してきた頃だけど。

最近はすっかり聴くこともなくなってしまったのですが、YouTubeのチャンネル登録してある公式チャンネルに、そのライブアルバムがアップしてあるのに気が付いて、ついつい聴いてしまったのが失敗でした。
これを聴きながら、この「52ヘルツのクジラたち」を読んでしまったのです。
あまりにもはまりすぎて、涙腺崩壊でした。

もしも映画化、ドラマ化するようなことがあれば、主題歌としては、私が鬼束ちひろの曲の中で一番好きな、こちらを推します。


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1年くらい前に図書館に予約を入れて、やっと回ってきました。
当然、他の方の予約もびっしり入っていて、貸出の延長はできないので、早いとこ読んでしまわなければと、一気に読んじゃいました。

昨年の本屋大賞(書店員が一番売りたい本)の受賞作品ですね。

内容は細かく書かないので、気になる方は自分で読むか調べてくださいね。

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それにしても、生きるのがとても辛く感じる物語。
何でこんな辛い話を好き好んで読んでしまうのか。なんと言うか、昔見た「白夜行」ってドラマにはまってしまっていたことを思い出しました。
人は他人の不幸を見るのが好きなの?
そうではないことを願いたいです。
ここまで過酷ではなかったけど、自分の人生に少しなぞって読んでしまう。
目の前にこんな人が現れたら、やっぱり気になって、救ってあげたいと思ってしまうのだろうと思います。
白夜行」に比べれば、最後にほんの少しだけ救いがあるけど、それにしても背負ってしまったものは大きい。

いつものように、勝手に脳内で登場人物を配役していました。
個人的には、主人公の貴湖は宮崎あおい。貴湖を気になって仕方ない村中は金子賢
そこまではさっと浮かんできたのですが、そこからは物語にどっぷりつかってしまって、俳優像が浮かんでこなくなりました。

本当は、その俳優が持っているイメージから配役をするよりも、特に理不尽な人生を送っている人物の役なら、全くイメージとはそぐわない人を配薬した方が、その歪んだ人物像を掘り起こせるような気がします。
そんなことを考えていたら、配役のイメージができなくなってきてしまいました。

つまり、例えば笑顔のとてもかわいい女の子が、実は陰ではものすごく辛い人生を送っていたとか。
これが初めから辛そうなのが表情に出ていたら、捉え方も違ってくると思うんですよね。
天真爛漫さを感じさせるほど影を感じさせない人を配役した方が、物語に厚みが出る。本人のせいではなく、理不尽なことは誰にでも起こりうることを示唆できるのではないかと。
まぁ、私の勝手な妄想なんですけど。

それにしても、主人公の貴湖や、貴湖が救おうとした、家族に「ムシ」と呼ばれて虐待されていた少年・愛(いとし)よりも、私は貴湖を全力で救おうとしたアンさんが気になって仕方なかった。
彼(彼女?)が物語に登場してから、最初から最後(最期)までずっと、この人の方ばかり気がとられてしまったよ。あまりにも切なすぎる。
できることなら、著者の町田そのこさんには、アンさんを主人公にした物語を書いていただきたいです。

ちょっとだけ気になったこと。
最後の最後で、主人公が必要以上に多弁なんです。
なんと言うか、2時間サスペンスで、犯人が捕まる時に、いろいろな種明かしをするでしょ?あんな感じ。
ドラマ「相棒」で、最後に必ず犯人が右京さんに「いつから私が犯人だと気が付いていたのですか」と訊いて、それに対して右京さんがいろいろと種明かしをする感じ。
なんか白けちゃう。

この小説、この最後のシーンに至るまでに、読者はたくさんたくさん思いを積み上げてきているはず。最後のシーンは、この余韻に浸らせてくれたら良かったのに。
著者の想いが爆発したのかもしれないけど、最後はもっと行間をたくさん開けておいてよかったのかなと思いました。

以上です。これを読んでこの本を読みたいと思う人はいないだろうな(笑)(笑)。

 

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