冬を越えた冬瓜

もうずいぶんと昔の話になりますが、友人に温泉に行こうと誘われましてね。
温泉など年寄りの入るものくらいに考えていて、もともと好きではなかったですし、他人とお風呂に入るのも苦手ですし、あまり乗り気がしなかったのです。でも、その友人にはいろいろと事情がありまして、断り切れずに行くことになってしまって。まぁ、彼が喜んでいるなら...

計画も泊まるところの手配も全てその友人任せ。私は何もしなくて良いということでした。
交通手段もその友人の車。ほぼすべて彼が運転していました。

中央道から山梨県に入って、そこからは山道をクネクネ。
山梨県なのに京都のような名前の温泉で、秘湯と言ってもいいくらいの、何もないところにポツンと1軒だけの温泉旅館でした。
寂れた感じで、ちょっと大丈夫かなと心配になりました。
従業員の人達も何となく皆さん人見知りな感じで、とても不愛想ですし。
お部屋の入ってみると、片隅になんだかわけのわからない虫がいるし。

えらいところに来てしまったなぁ、と思いながらもせっかく来たのだから、とりあえず温泉には浸かってきました。
そして夕食。

山の中の温泉で、どんなものが出るんだろうと思っていたら、本当に山の中のものばかり。
山菜だとかきのこだとかなら想像がつきますが、何だかわからない鳥の丸焼きなんかがのっかっていてビックリしました。

恐る恐る食べてみると、意外や意外、どれもみなとてもおいしいのです。
せっかくだからと注文した地ビールもとてもうまい。
これで一瞬にしてこの旅館の印象が変わりましたね。作っている人の心が伝わってくるというか、あの不愛想な感じでも許せてしまうというか。
家に帰ってきてから調べてみたら、実はそのお料理でとても人気のある旅館だったようです。

その中でも特に印象に残ったのが、冬瓜の煮付だったのです。
それまででも冬瓜は何度か食べたことはありましたが、おいしいと思ったことは一度足りとありませんでした。まぁ、うちの母があまりお料理が得意ではなかったというのもあるのですが...

その時以来、冬瓜はおいしい素材と脳にインプットされてしまい、八百屋さんやスーパーで冬瓜を売っているのを見ると、ついつい欲しくなり、買ってしまうんですよね。
思いっきりでっかいのを狙って、いやいや、冬瓜は大きくなくっちゃねぇ!
とは言え、私の力では、あの時の味と同じようにはできません。
何度となく、罰ゲームのように失敗したものを自分で食べたことか...。
もう、冬瓜をおいしく料理するのは諦めよう、そう思っていたのでした。

ところで、冬瓜は夏の野菜なのに、なぜ「冬」瓜なのかご存じでしょうか?

本当かどうかについては無責任な態度でいたいと思いますが、聞いたところによると、なんでも夏に収穫されたものが、冬になっても食べられる、とても日持ちすることからそうつけられたのだとか。
世界的な食糧難のこのご時世、一家に一個、ストックしておくのも良いかもしれませんね。

それで、昨年の夏の終わり、農産物直売所に行った時のこと。
少し遅い時間に行ってしまったら、すっかり品物がなくなっていて、売り場はガラガラ。
その時に目に留まったのが、冬瓜でした。
買いたいものがほぼ何もなくて、そこに見つけた冬瓜です。
おいしくお料理することはすでにあきらめていたはずだったのですが、せっかく歩いて3時間もかけて何も買わずに帰るというのも何だかなぁ、と思い、これは魔が差したというしかないのですが、冬瓜を買ってしまったのです。

別にすぐに食べなくても大丈夫だし...
そう思って、台所の床に転がしておいたのでした。
いつか食べる、そう思って1週間、1か月と過ぎ、それが2か月、3か月となり、そして冬になりました。
それだけ放置してあると、存在そのものが私の脳から消え去ってしまったようで、というよりはむしろ、無かったものにしたいという気持ちが働いてしまったのかもしれません。自然と目につかない場所に移動させてしまっていたのでした。

すっかり忘れていた今日この頃だったわけですが、こないだとあるブログでさつまいもの記事を読みましてね、掘った芋いじるな。
これを読んで気になってしまったのですよ。うちの冬瓜どうなっちゃたかなって。
だって、もう春ですし。冬瓜の名前から保証されている賞味期限も切れていますよね。
恐る恐る拾い上げてみると、ちょびっと傷んでいる...
で、今日になってやっと包丁を入れてみました。

あぁ、良かった、外から見える10円玉くらいの大きさだけでした。これでひとまず食べ物をそのまま捨てずに済みました。

どんなふうに食べようか何もアイデアがないので、とりあえず下茹でだけしておきました。
どうせ鶏肉とか生揚げとかと一緒に煮るみたいなものになりそうですが、豚の挽肉でカレーにしようかなとか、あとは何だろう?
続きは...(笑)

最近は、ものごとを純粋に楽しむことができません。
笑ってしまってもいいのかな?と思ってしまうんです。

どちらかというと何事もネガティブに考えてしまう私です。
楽しい話題を見つけて、楽しい話をブログに書けば、今までと違ってもっと楽しいことに注目するようになるのではないかと思っていた時もありました。

でもそれは限界がありますね。

自分で書いていて、楽しんでいないのです。毎日更新のノルマ達成のために、無理やり書いているような気がする。
それでも毎日書くのは、ネガティブ思考の自分も含めて、ありのままの自分を自分自身で認めてあげたいからなのでしょう。
こんなことにお付き合いしていただいて、ありがとうございます。
どうか、私のネガティブ思考が皆さんに伝染しませんように。